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感謝の力
(内藤俊史・鷲巣奈保子 2020.8.4 最終更新日 2024.5.29)
感謝をする人も、そしてされる人も、前向きの力を心に感じます。このセクションでは、主に感謝をする人に焦点を当てて感謝の力(効力)を考えます。
なお、ポジティブ感情(快く感じる感情)としての感謝をとりあげ、感謝とともに経験することの多いすまないという気持ちや心理的負債感は、別のページでとりあげます(「心理的負債感とすまないという心の力」➩)。
このセクションの内容
北京オリンピックにおける日本と米国のカーリングの試合で、ショットを放つ藤沢選手の手には漢字で「感謝」という文字が書かれていました。リンク先は、2/16 日刊スポーツ、21:10配信、撮影・菅敏 (2022.3.8アクセス)。
感謝のもつ力-感謝がもたらすもの
感謝は、単なる受け身の感情や反応ではなく、自分自身の心を前向きにし幸福感を高めるとともに、他の人々の幸福に向けて様々な行動を引き起こします。そのような意味で、感謝は力をもちます。感謝の力は、数多くのサイトや出版物で取りあげられていますが、その内容は一つではありません。それらをまとめれば、次のような感謝の力を挙げることができるでしょう。
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自分自身の心身の健康と幸福感を高める。
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心身の健康を害する要因、例えばストレスをもたらす出来事による影響を緩和する。
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感謝の対象と自分との関係を維持し深める。
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集団における相互の信頼感を高める。
そもそも、感謝は心と行動のさまざまな要素から成り立っていますから、どの要素に注目するかによって、感謝の異なる力(効力)が取り上げられることになります。このセクションでは、感謝を、大雑把に、「感謝に至るまで」「感謝を感じるとき」「感謝を感じた後」という3つのプロセスに分けて、感謝の力を整理したいと思います。全体については、図1を参照してください (図1)。
3つのプロセスにおける感謝の力―いくつかの仮説とともに
感謝の効果についての代表的な仮説を関連づけながら、それぞれのプロセスにおける感謝の効果を説明します。なお、とりあげる仮説は、主にWood, Froh, and Geraghty (2010)の論文を参考にしています。
・感謝に至るまで
第一のプロセスは、感謝のための構えをもっている状態です。いわば感謝の準備状態です。この状態では、個人がもつ「感謝のスキーマ」が準備状態になっています。「スキーマ」とは、それぞれの人がもつその人なりの"理論"、概念構造です。感謝のスキーマは、例えば「感謝をしなければならないことはないか」と問うことによって、活性化することができます。活性化された感謝のスキーマは、感謝に値するかという観点から、様々な事柄の検討を開始します。つまり、「自分はどのような利益や幸福を得ているのか」「それらに対して他者がどのような意図で、どのような貢献をしたのか」「そのために費やされた犠牲はどのようなものか」など、感謝をするかどうかの判断に必要な情報を探索します。
感謝のスキーマは、多くの場合、活性化されることによって、感謝への道を開きます。しかし、たとえ感謝に至らなくても、感謝のスキーマは、重要な働きをもちます。
感謝のスキーマは、感謝という観点から様々な事象を捉え直します。自分の幸福の認識やそれに対する他者の貢献などが、あらためて問われることになります。このように、感謝のスキーマは、他との関係に関する重要な認識の変化をもたらします。それは、感謝のもつ重要な力の一つです。
これらの考えは、感謝のスキーマ理論に基づいています。感謝のスキーマ理論の立場に立って考えた場合、感謝心の強い人の条件の一つは、活性化しやすい感謝のスキーマをもつことです。そのため、感謝心の強い人は、感謝という観点から様々な事象を理解する高い傾向をもちます。その結果、感謝を感じる機会も多く、感謝にもとづく向社会的行動(思いやり行動など)も増加します。
最後に、感謝のスキーマの働きの一面を示す、興味深い研究結果を紹介します。それは、感謝傾向(特性)がポジティブリフレイミング(前向きの捉え直し)の傾向を高め、その結果、抑うつ的感情を低めるというものです(Lambert, Fincham, & Stillman, 2012)。ポジティブリフレイミングとは、悲観的に理解されている状況を、「長い目で見直す」などによって、前向きに捉えなおすことを意味します。感謝のスキーマは、このポジティブリフレイミングを促すことによって、状況のプラスの面に気づかせる働きがあると考えられます。
・感謝を感じるとき
第二のプロセスは、感謝の気持ちを感じているときです。感謝は、文化や状況に応じて、負債感情などさまざまな感情を伴いますが、ポジティブ感情は、感謝の主たる感情として多くの場合に経験されます。そのなかには、プレゼントをもらった直後のような短期間の喜びの感情もあれば、相手との関係を確認したことや関係が深まったことによる長期にわたる安心感や幸福感も含まれます。これらのポジティブ感情は、憂うつや不安などのネガティブ感情を抑える効果があるとされています。
感謝の効果に関するこの説明には、次にあげる二つの仮説が関連します。
一つ目は、ポジティブ感情仮説です。一般的なポジティブな感情、つまり快く感じる感情は、それが習慣的に経験されることにより、鬱状態などの心理的状態を改善する効果があるとされています。感謝も、ポジティブ感情を含みます。感謝は、一般的なポジティブ感情を引き起こし、その結果、幸福感や精神的健康を高めるというのが、この仮説です(研究の例として、Lin, 2019)。
なお、話は少しそれますが、感謝のwell-beingへの効果は「すべて」この一般的なポジティブ感情によるものであるという仮説に対しては、Woodら(2010)は、感謝心のwell-beingへの効果が、一般的なポジティブ感情の効果だけでは説明できないという研究結果をもとに否定しています。つまり、感謝のもつ一般的ポジティブ感情では説明できない感謝の別の効果があるという訳です。
二つ目の仮説は、 感情が認知に影響を及ぼすという拡張・形成仮説です。それは、Fredrickson (2001)により提唱された、感情の働きについての理論であり、「ポジティブな感情は、思考や行動のレパートリーを一時的に拡げる傾向があり、その結果個人のもつ能力や資質が培われることになる」とされます。これを感謝に当てはめると、感謝にともなうポジティブ感情は、自他のあり方、そして関係や社会について、より広く認知させるようにさせ、その結果、幸福や健康のための的確な対応が可能になるとされます。
・感謝を感じた後
感謝の気持ちに続いて、様々な心理的な活動や行動が生じます。三つ目のプロセスは、感謝感情の後の過程です。このプロセスは、感謝の表現行動と、感謝にもとづくその他の行動や心理的変化を含んでいます(それらは、複雑な過程による場合もありますが)。
このプロセスにおいて、特に対人関係や集団に対して、感謝は多様な力を発揮します。
感謝には、相手の人格を認め、敬意を表現することがその内に含まれています。したがって、感謝を表現するとともに、感謝に伴う行動によって、他者、集団、社会との信頼関係は、より強固なものになると期待されます。そして、結果として、対人関係を質量ともにより豊かなものにし、集団や社会における相互的な援助の質を高めると期待されます。
感謝が集団のあり方を変える例としてよくあげられる例を示します。
映画のタイトルにもなった「ペイフォワードpay it forward」という言葉がアメリカ合衆国で知られているようです。それは、感謝を感じた人が、恩恵を受けた人以外の人々にも援助などを行うようになることです(恩恵を受けた人に返す恩返しは、pay backです)。恩人以外にも、恩恵を与えるようになるというのは、感謝の心の効果として認められています。このように、援助的な行動が拡大することによって、集団は相互扶助的になっていくことが期待されます。 感謝の感情を感じた後の行動には、さまざまな効果が期待されます。しかし、具体的に、どのような状況で、どのような方法が感謝のもつ効果を十分に発揮するのかという問題は、さらなる問題です。
感謝の力を示唆する研究
21世紀になって、感謝の力を確かめる研究は急速に増えています。ここでは、感謝がwell-being(心身の健康と幸福感など、注1)を高めることを示唆する研究に焦点を絞ります。
なお、well-beingは、1946年のWHO憲章において提案された健康の包括的概念です。それは、単に病気を患っていないことではなく、身体的な面、精神的な面、社会的な面において良好な状態であること、そして、それらを達成し維持することを含みます。その後、その内容について様々な分野で議論されてきました。心理学の研究では、well-beingの基本的な概念に基づいて、「主観的幸福感」「生活の充実感」「持続的な成長の感覚」「他の人々との良好な関係」などに関する心理的尺度が用いられてきました。
・相関研究
一つは、相関研究と呼ばれる研究です。感謝の心、つまり感謝を感じる傾向と、様々な人格特性やwell-beingなどとの相関関係を調べる研究です。それらの心理的性質は、主に質問紙によって測定されます。アメリカ合衆国で行われた大学生を対象とした先駆的な研究では、感謝特性を測る質問紙(GQ-6)は、生活満足度(.53)、主観的幸福感(.50)、バイタリティ(.46)、楽観性(.51)と正(プラス)の相関をもち、不安(-.20)、抑鬱傾向(-.30)と負の相関を持つことが見いだされています(かっこの中の数字は相関係数)(McCullough, Emmons,& Tsang, 2002)。
その後、数多くの研究が行われています。Portocarrero, Gonzalez, and Ekema-Agbaw(2020)は、感謝特性と、well-beingに含まれる様々な変数との関係を扱った、英語、スペイン語、ポルトガル語による144の論文における研究結果を対象として、総合的な分析(メタ分析)を行いました。その結果、感謝特性は、幸福感、生活の充実感、他の人々との良好な関係など(positive well-being)と正の相関がある一方、不安傾向、抑うつ傾向など (negative well-being)とは負の相関があるという結論を得ました。
加えて、感謝特性が、利他性や分かち合いの傾向、つまり向社会的傾向と正の関連をもつことが、別の研究者によるメタ分析によって明らかになっています(Ma, Tunney, & Ferguson, 2017)。
なお、相関研究にはいくつか限界があります。
一つは、二つの変数の間の相関研究は、二つの変数が共なって変化をすることを示すだけで、どちらが原因であるのかを明らかにする訳ではないことです。これまで述べてきた研究結果も、感謝が原因であると解釈することも可能ですが、「結果として」感謝心が高まるという解釈も可能です。その他にも、相互に影響しあった結果である可能性も十分に考えられます。このような問題に応える方法、例えばパネル調査などを採用する研究も増えています。たとえば、Unanue, 他(2019)は、感謝特性と主観的幸福感の縦断的な研究を行い、両方向的な影響を示唆しています。
二つ目は、これまでの多くの相関研究は、感謝の傾向(特性)と、性格や行動の傾向との関係を調べていますが、具体的にどのようなメカニズムで二つの傾向が関連するのかは、さらなる課題と言えます。
・感謝を経験することの効果の研究
もう一つは、感謝の気持ちを経験するという実験的な手続きによって、well-beingなどが変化をするかを調べる研究です。なかでも、「感謝を数える方法」はよく用いられています。研究の参加者に、例えば一週間に一度、その週で感謝することをあげてもらうという実験手続きを用います。先駆的な研究が、Emmons & McCullough(2003)によって行われています。結果は、概ね、感謝という経験がwell-beingのさまざまな面に対してプラスの効果をもつというものでした。
その後の研究に影響を与えた研究ですので、研究の概略を説明します。彼らの論文には3つの研究が報告されていますが、研究1では,一週間のうちで感謝したことを 5つ以内記録する「感謝条件」、厄介な出来事を5つ記録する「厄介ごと条件」、影響力のあった出来事を 5つ記録する「出来事条件」を設定し、実験参加者は、いずれかの条件に振り分けられました。各々の条件にしたがって、10週間の間、参加者は毎週1度、記録用紙の提出が求められました。
それぞれの条件の効果を調べるために、以下の項目が実験の事前と事後に調べられました―「気分」「体調」「運動時間(激しい運動と適度な運動)」「包括的なwell-beingの評価(現在の生活全般の質と未来の生活全般への期待,他者との関係)」「サポートに対する反応」「カフェインを飲んだ量」「アルコールを飲んだ量」「アスピリン錠や痛み止めを飲んだ量」「前日の夜の睡眠時間と質」「向社会的行動(道具的サポートと情緒的サポート)」。
結果を総合すると、感謝条件においてwell-beingに関わる得点が高いという結果が得られました 。
これらの研究以降、同様の研究が数多く行われ、それらの研究結果を総合して結論を導くための分析、すなわちメタ分析がいくつか行われるようになりました。しかし、それらのメタ分析は、必ずしもこの方法による大きな効果を示してはいません。例えば、Cregg & Cheavens (2021)は、不安傾向や抑うつ傾向に対して、感謝を記録することがどの程度の効果をもつのかを、これまでの研究結果に対するメタ分析により検討しています。その結果、感謝することを書きとどめるという方法の効果は控えめmodestであり、不安傾向や抑うつという症状に対しては、より効果の大きい他の技法を採用することを勧めると結論づけています。
この分析結果は、感謝がwell-beingを高めるためには、何らかの条件が必要であることを示しています。
例えば、文化的な基盤や背景も、効果を左右する条件かもしれません。アメリカ合衆国において肯定的な結果を報告するいくつかの研究がある一方で、日本と韓国などでは効果がみられないという研究もあります(例えば、相川・矢田・吉野、2013; Lee, Choi, &, Lyubomirsky, 2013, 研究のレビューとして、Kerry, Chhabra, & Clifton, 2023)。
この結果について、私たちは、次のように考えています―ある文化的環境、日本や韓国では、感謝は、同時に心理的負債感やすまないというネガティブな感情を伴いやすい。したがって、感謝の経験から短期間の間は、主観的幸福感のようなポジティブ感情の変化は生じ難い(Naito, & Washizu, 2010)。
真の感謝の力を知るために-まとめにかえて
終わりに、感謝の真の力を探る上で考慮しなければならない点をまとめます。
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「感謝の経験のもつ効果の研究」は、感謝の経験が、より確実でより大きな力をもつためには、条件が必要であることを示唆しています。それらの条件を知る必要があります。
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また、感謝の行動が、効果をはっきりさせるためには、状況に即した感謝の行動が必要です。それらの行動によって、はじめて感謝は力を発揮します。
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このセクションの前半で述べたように、感謝の力は多様です。したがって、感謝のどの力を期待しているのかによって、とるべき手だては異なるはずです。感謝の力に期待するとき、感謝のどの力に期待しているのかを明らかにする必要があります。
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このセクションでは感謝の力、つまり感謝による影響に焦点を当てました。しかし、人間の様々な側面と感謝傾向との関係は、必ずしも一方向的ではなく、双方向的である場合も多くみられます。例えば、感謝傾向が幸福感に影響するとともに、幸福感が感謝傾向に影響をすることを示唆する研究結果が得られています(Unanue, et al., 2019)。感謝は、多様な形で力をもつと考えられます。
これらを考慮することによって、感謝の真の力が明らかになると期待されます。
参考 道徳的な力としての感謝
このセクションの最後に、感謝のもつ力の一例として、「感謝の道徳的な力」について説明をします。
アメリカ合衆国の心理学者のマッカラ(McCullough, M.E.)らは 、感謝が、人から助けられるなどの道徳的な事柄によって生じること、そして他の人々を助けるなどの道徳的な行為を生み出すことから、「道徳的感情」と呼ぶに相応しいと主張しています(McCullough 他, 2001)。後者は、道徳的な力をもつ感情であるといってもよいでしょう。
そこで、なぜ感謝が道徳的な力なのかを、マッカラらの主張にもとづいて説明します。
a .感謝の心は、道徳的な行動を生じさせること
感謝の心は、恩恵を与えてくれた人に対する恩返しの行動を生みます。それも道徳的行動の一つといえるでしょう。しかし、それだけにとどまりません。感謝の気持ちをもつと、恩恵を与えてくれた相手だけではなく、その他の人々の幸福を目的とした行動への意欲が高まります。
b. 感謝は相手との関係を道徳的な関係に変えること
マッカラらは、感謝は「道徳的バロメーターmoral barometer」であるといいます。他の人に助けられたとき、単に「うまくいってよかった」「助かった」という感情だけではなく、感謝の気持ちをもったとき、お互いの関係は一変します。そこには、利害関係とは別のいわば「人と人との関係」「道徳的な関係」が芽生えています。見方を変えれば、感謝の気持ちの有無は、その関係が道徳的なものであるかどうかを示しています。
私たちの言葉でいえば、感謝は、関係を道徳的な関係に変える力をもちます。
文献
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相川充・矢田さゆり・吉野優香 (2013). 感謝を数えることが主観的ウェルビーイングに及ぼす効果についての介入実験.東京学芸大学紀要 総合教育科学系1,64,125-138.
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Cregg, D. R., & Cheavens, J. S. (2021). Gratitude interventions: Effective self-help? A meta-analysis of the impact on symptoms of depression and anxiety. Journal of Happiness Studies, 22(1), 413-445.
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Emmons, R. A., & McCullough M. E (2003). Counting blessings versus burdens: An experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of Personality and Social Psychology, 84, 377-389.
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Fredrickson, B. L. (2001). The role of positive emotions in positive psychology: The broaden-and-build theory of positive emotions. American psychologist, 56(3), 218-226.
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Froh, J.J. et al. (2014). Nice thinking! An educational intervention that teaches children to think gratefully. School Psychology Review 43(2), 132-152.
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Jans-Beken, L., Jacobs, N., Janssens, M., Peeters, S., Reijnders, J., Lechner, L., & Lataster, J. (2020). Gratitude and health: An updated review. The Journal of Positive Psychology, 15(6), 743-782.
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Kerry, N., Chhabra, R., & Clifton, J. D. (2023). Being Thankful for What You Have: A Systematic Review of Evidence for the Effect of Gratitude on Life Satisfaction. Psychology Research and Behavior Management, 16, 4799-4816.
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Lambert, N. M., Fincham, F. D., & Stillman, T. F. (2012). Gratitude and depressive symptoms: The role of positive reframing and positive emotion. Cognition & emotion, 26(4), 615-633.
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Lee, L, K., Choi, H. I., &, Lyubomirsky, S. (2013). Culture matters when designing a successful happiness-increasing activity. Journal of Cross-Cultural Psychology, 44(8),1294-1303.
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Lin, C. C. (2019). Gratitude, positive emotion, and satisfaction with life: A test of mediated effect. Social Behavior and Personality: an international journal, 47(4), 1-8.
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Ma, L. K., Tunney, R. J., & Ferguson, E.(2017). Does gratitude enhance prosociality?: A meta-analytic review”. Psychological Bulletin, 143(6), 601-635.
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McCullough, M. E., Emmons, R.A., & Tsang, J (2002).The grateful disposition:A conceptual and empirical topography.Journal of Personality and Social Psychology, 82,112–127.
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Portocarrero, F. F., Gonzalez, K., & Ekema-Agbaw, M. (2020). A meta-analytic review of the relationship between dispositional gratitude and well-being. Personality and Individual Differences, 164, 110101.
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Unanue, W.,Gomez Mella, M. E.,Cortez, D. A.,Bravo, D.,Araya-Véliz, C.,Unanue, J., & Van Den Broeck, A. (2019). The reciprocal relationship between gratitude and life satisfaction: Evidence from two longitudinal field studies. Frontiers in Psychology, 10, 486254.
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Wood, A. M., Froh, J. J., & Geraghty, A. W. (2010). Gratitude and well-being: A review and theoretical integration. Clinical Psychology Review, 30(7), 890-905.
セクション本文終わり
注1
well -being は、1946年のWHO憲章において提案された健康概念です。単に、病気にかかっていないということではなく、身体的な面、精神的な面、社会的な面において良好であること、そして、それらを達成し維持する実践が含まれます。その内容をめぐって、議論がなされてきました(詳しくは、Ryan & Deci (2001)によるレビューを参照)。
一例をあげれば、Seligman, M (2012)は、P(Positive emotion/ポジティブな感情)、E(Engagement/物事への積極的な関わり)、R(Relationship/他者とのよい関係)、M(Meaning/人生の意義の自覚)、A(Accomplishment/達成感)からなるPERMA を提案しています。
well-beingの概念は、日本の心理学のみならず経済界や教育界などで取り入れられ、日本の社会に適したwell-beingの試みも提案されています。本サイトでは、アメリカ合衆国における心理学の成果に言及することが多いため、アメリカ合衆国におけるwell-being概念を念頭に置いています。
最後に、well-beingについて一言述べたいと思います。well-beingの一般的な内容については、共有されやすいかもしれません。しかし、その具体的内容について決めることはなかなか難しいと思います。「well-beingとは何か」という問いは、「幸福とは何か」「善い生き方とは何か」という問いと同様に、時とともに問い直されていくものではないでしょうか。そして、well-beingを高める感謝の意義もまた、問い続けられることでしょう。
文献
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Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2001). On happiness and human potentials: A review of research on hedonic and eudaimonic well-being. Annual review of psychology, 52(1), 141-166.
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Seligman, M. E. (2012). Flourish: A visionary new understanding of happiness and well-being. Simon and Schuster.