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根植于感恩的民间表演艺术
- 节日的教育意义之一
(内藤俊史、2025.8.20 最終更新日 2025.11.16)
キーワード: 民俗芸能、お囃子、祭り、地域における教育、社会教育、川越、神や自然への感謝
自然や神仏への感謝や願いは、長い歴史の中で祭りなどの社会的・集団的活動を生み出してきました。それらの活動は広い意味で教育の場としても機能してきました。本ページでは、埼玉県川越市における民俗芸能活動の教育的意義について、その概要を描きます。
(読むのにかかる時間:約10分・注含む)
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はじめに
自然や神への畏敬に根ざした感謝や願いは、儀式や祭礼を生み出してきました。これらは、神職等による儀式に限らず地域住民の参加を伴い、暮らしに根ざした営みとして地域社会の結束を支えてきました。
このページでは、儀式や祭礼の際に演じられる民俗芸能に焦点を当てます。ここで言う「民俗芸能」とは、
a. 地域の風俗慣習や信仰に根ざし、
b. 地域の人々によって行われ、
c. 世代をこえて継承されてきた芸能を指します。
本ページでは、特に「世代をこえた継承(c)」に着目し、ある程度の期間を要する指導や稽古など、継承のための活動を含む民俗芸能を取り上げます(注1)。
注1
なお、「民俗芸能」という語について、日本芸術文化振興会のサイトには次のような説明があります。「地域の暮らしの中で行われる祭礼や行事において人々が演じる歌や舞、踊、演劇といった芸能、またその祭礼や行事そのものを民俗芸能といいます」。その上で、それらの芸能は、地域の担い手によって、地域の風土、信仰を反映しつつ、受け継がれてきたという説明が続きます(日本芸術文化振興会 2025.9.13 閲覧)
近年、こうした伝統的活動の果たしてきた機能が、改めて注目されています。地域の結束力や教育力の低下が指摘される中、その対応策として、地域における様々な教育的資源の活用が求められるようになりました(ここで言う「教育的資源」とは、子どもと大人の学びを促し支える人的資源や施設に加え、広く文化や伝統を含みます)。そのためには、地域に眠る教育的資源を再発見したり、場合によっては、新たに創造することが必要になります。
このページでは、埼玉県川越市における地域の教育的資源として民俗芸能活動に焦点を当て、その輪郭を描きます。なお、民俗芸能そのものというよりも民俗芸能に関わる様々な活動を意味するために、「活動」という言葉を添えます。
川越市における伝統的民俗芸能活動
川越市では、寺社の祭礼を初め、五穀豊穣への感謝を表す「万作」や、無病息災を願う「ふせぎ」など、数多くの伝統的な年中行事が継承されています(注2)。それらの行事の多くで、獅子舞、お囃子、神楽といった伝統芸能が演じられます。 例えば、川越市には、国の重要無形民俗文化財に指定されている川越氷川祭りの山車行事を初めとして、6件の県指定無形民俗文化財、12件の市指定無形文化財がありますが、その多くで、獅子舞、お囃子、神楽などの伝統芸能が演じられます(川越市ホームページ、2025年)。なお、川越氷川祭りの場合には、山車行事などに参加するお囃子保存会などの団体が39団体あります(川越祭り公式ホームページ、2025年)。
しかし、全国的な傾向として、民俗芸能は後継者育成の問題に直面していると言われています(毎日新聞、2024.11.6)。川越市のお囃子保存会でも後継者育成の課題を認識し、その対応が試みられています(川越市教育委員会、2016)。
注2
川越市内で行われている伝統芸能活動に関する主なサイト
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川越市ホームページ (2024.11.28). 無形民 俗文化財一覧 指定された民俗芸能の概要を知ることができます。 2025.6.27閲覧
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鯨井の万作保存会 保存会の活動が、ホームページで公開されています。 2025.6.27閲覧
川越市で行われる祭りとしては、川越氷川祭りが知られていますが、その他の伝統行事を含 む参考文献
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川越市教育委員会 (1981). 『川越市子ども民俗芸能大会解説書』〔未公刊資料]
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大久根茂 (2002). 川越の祭りと芸能. 小泉功 監修 『川越の祭り』 埼玉新聞社. pp. 194-199.
民俗芸能活動の教育的資源としての意義
民俗芸能活動が教育的な意義をもち得るとすれば、それは民俗芸能のどの性質によるものなのでしょうか。以下に、その主な要素を整理します。
A 共有される目的のもとに、役割と責任が与えられること
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演技や演奏の目的を他者と共有する機会が与えられる。その下で、参加者には具体的な役割と責任が課される。
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祭りなどの「ハレ」の日に、公的な場において(人々の前で)演技や演奏を披露する機会がある。
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歴史や伝統の継承者としての自覚が求められることで、伝統に対する責任や役割を担うことにつながる。
B 技能の習得過程における異年齢間の交流
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必要とされる技能は、熟達者である年長者から継承され、さらに年少者へと伝えられる。このように、年齢を超えた相互交流が行われ、子どもから高齢者まで幅広い世代が関与する。
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子どもや青年が「教える」「教えられる・学ぶ」という双方の立場を経験する機会があり、集団として教育的な相互作用が生まれる。
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動作を中心とした身体的な学びと教えが多く含まれ、非言語的な伝達も重要な要素となる。
C 地域の歴史に触れること
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一般的な日本史の理解に加え、地域固有の歴史を具体的に位置づけることが可能となる。
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動作を通じて、過去の人々の体験を身体的に追体験し、歴史への理解を深める契機となる可能性がある。
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民俗芸能が関わる祭事は、自然との関わりを示すものが多く、自然に対する畏怖や感謝など、人々がもち続けてきた感情に触れる機会がある。
これらの特徴に基づいて、民俗芸能活動は、子どもや青年の自己肯定感、自己のアイデンティティ、地域への愛着等をめぐる教育の場となることができます(注3)。また、成人や高齢者にとっても、地域における教育的な役割と協力を意識する場にもなります。
注3 学校教育との関係
民俗芸能活動が学校教育とどのように関わるかは、重要なテーマです。
学校教育の視点に立てば、民俗芸能やその一部を学校教育の目標のもとに位置づけることで、教育内容をより豊かにする可能性が生まれます。たとえば、総合的な学習の時間や社会科、道徳科、音楽、体育などの授業において、祭りや民俗芸能を題材として活用する試みはすでに報告されています(例:埼玉県教育委員会による県内学校での実践集)。さらに、特別活動においては、部活動の選択肢として民俗芸能を取り入れることも考えられます。
一方、民俗芸能活動の視点に立てば、学校で取り上げられることにより、地域における民俗芸能活動の活性化に繋がる可能性があります。
また、学校教育と民俗芸能活動の交流を考えることには大きな意義があります。民俗芸能活動への参加を単なる特殊な経験として捉えるのではなく、学校教育を含めた子どもの全体的な発達においてどのような意味を持つのかを改めて考え、その教育的価値を明確に位置づける契機となります。
教育的資源としての民俗芸能活動の課題
教育的資源は、教育のための土台を提供します。しかし、それを真に教育として機能させるためには、子どもや青年一人ひとりが持つ善くなろうという心を大切にし、彼らに働きかけることによって、学びや習得が促進される適切な環境を整える必要があります。
地域により異なる課題
民俗芸能活動が、地域の教育的資源として定着し機能するためには、どのような課題があるのでしょうか。それらの課題は、川越市における各地域に応じて異なると考えられます。というのも、民俗芸能活動の現在のあり方に地域差があると推測されるからです。
例えば、2000年代初頭に実施された川越氷川祭りに関する総合的な調査によると、対象となった38のお囃子連は、流派や使用楽器の構成だけでなく、会員数や入会資格においても差異が見られました。会員数は15人から66人まで幅があり、入会資格に関しては、男性に限定している会が3件、何らかの年齢制限を設けている会が13件、さらに町内在住など居住地を条件としている会が19件存在しました(川越市教育委員会, 2003, 資料編, p.434)。
こうした差異に加え、現在の川越市における地域の多様性(商業地域、農業地域、集合住宅地域など)は、伝統的な民俗活動の維持・発展に関する課題が一律ではないことを示唆しています。
課題の一般的性質
ここでは、具体的な事例から一歩離れて、民俗芸能活動において生じ得る課題の一般的な性質について考えます。民俗芸能に関わる活動では、指導体制や集団内の人間関係のあり方といった実践的な課題から、伝統的な価値観や信念への新たな対応といった抽象的な課題まで、さまざまな問題が想定されます。これらの中には、メンバー個人のライフスタイルの尊重やジェンダー平等といった現代的なテーマも含まれています。
また、民俗芸能が深く関わってきた祭りについて見渡すと、近年では、宗教的要素と非宗教的要素(地域活性化、観光振興、地域愛の醸成など)との調和をいかに図るかという課題も浮上しています。
個々の課題について詳細に扱うことはできませんが、これらの課題は主に、次の二つの一般的な対立的カテゴリーに分類されると考えられます。
A. 伝統 vs 現在・将来
伝統に根ざした価値観や信念と、現代社会における価値観との葛藤
B. 地域あるいは集団限定性 vs 普遍性
地域固有の価値観や信念と、他の地域あるいは普遍的な価値観・信念との葛藤
それぞれの地域における課題に、一つずつ対応していくことによって、民俗芸能は教育的資源としての力をさらに発揮することになると考えられます。
民俗芸能活動と感謝の心
このサイトのテーマである「感謝の心」が、民俗芸能活動とどのように関わっているのかについて考察します。ただし、時代の変化もあり、現時点では明確な答えを導き出すことは困難と思われます。そこで、今後の探究に向けた基盤づくりとして、まずはその関係を見通すための手がかりを整理していきたいと思います。
祭りの目的としての感謝と祈念
民俗芸能の多くは祭りの際に演じられ、祭りの一部として位置づけられています。そこでまず、祭りと感謝の関係について考えます。
一言で言えば、祭りとは神への感謝と祈念を込めた、形式に基づく組織的な営みであると言えるでしょう(注4)。祭りにおける人々のさまざまな所作は、感謝と祈念の表現として意味づけられます。たとえば、神前での拝礼や祝詞の奉仕、供物の奉納といった神事は、神に対する感謝や願いを示す行為です。また、山車の上で演じられる囃子や芝居も、神への奉納芸能として意味づけられています。
祭りにおける人々の心
祭りが感謝や祈念を意味する組織的な営みであるとしても、それぞれの役割を担う人々が、必ずしも感謝の心に動機づけられているとは言えません。また、その役割によって感謝の気持ちが高まるとは限りません。
それでは、祭りにおける人々の意識や心理はどのようなものでしょうか。
福島(2002)による高千穂夜神楽の研究では、神楽に関わる様々な役割を担う人々の意識が調査されています。その中には、心から神々に感謝して舞うことを目指すという舞い手による語りが記されています(福島、2002)。
一方で、歴史的に見ると、氏神への信仰を基盤としていた祭りは、次第に地域活性化や観光などの非宗教的な目的が意識されるように変化してきました。参加者の動機も、宗教的信仰、伝統の継承、地域への愛着、自己表現、娯楽など、多様化しています。すでに、柳田国男は1941年に出版された著書『日本の祭』(初版)において、神主や氏子など祭事を営む人々による「祭り」と、当事者と直接関わりのない見物人も参加する「祭礼」とを区別しています(柳田、1969)。
祭りにおける人々の意識は、以下のような要因によって差異や変化が生じると考えられます。
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祭りにおける役割(神前で儀式をつかさどる人々、山車上の囃子演者、山車を引く人々など。注5)。
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祭りの性質(宗教性の程度など)
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時代的・社会的要因(地域活性化、観光などの社会的要請など)
心を探求するための枠組み
祭りにおける民俗芸能の担い手たちの心理を探究するためには、以下のような視点が必要と考えられます。
1. 心の重層性
人間の心理を探究する際に留意すべき点の一つは、その多層性です。民俗芸能を含む祭りの参加者も、多くの人々と同様に、以下のような複数の心の層を有していると考えられます。
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地域や社会の一員としての「公的な意見」
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個人としての思いや願いといった「私的な意見」
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自分でも気づいていない「無意識の動機」
2. 動機の多様性
近年では、祭りへの参加に込められた思いも多様化しています。氏神への信仰、自然や超自然的な存在への感謝、伝統の継承、地域とのつながり、郷土への愛着、達成感や自尊感情など、さまざまな動機が意識されるようになってきました。
例えば、公的には「地域の絆を深める」ことを目的としていても、個人的には「この一年の家族の幸福を神に感謝したい」という思いがあり、さらに無意識の深層では「何かを成し遂げたい」という達成動機が参加の原動力となっている場合もあります。
このように、祭りという複合的な機能をもつ活動においては、人々の心理もまた多層的かつ多様な動機づけによって構成されており、これらの視点はその理解に不可欠な枠組みと考えられます。
注4
現在では、宗教的な色彩のない、何らかの統一的なテーマの下で人々の集まる活動を「祭り」と呼ぶことがありますが、ここでは伝統的な祭りを想定しています。
注5
伝統的な祭りにおいて、年齢とともに役割が変化する例があり、通過儀礼としての機能がみられることが指摘されています(倉林、1999)。祭りや民俗芸能活動の内部において、役割が分化され、期待される行為や意識も異なることが示唆されます。
文献
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福島明子 (2003). 『高千穂夜神楽の健康心理学的研究―神と人のヘルスケア・システム』 風間書房
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川越市教育委員会 (1981). 『川越市子ども民俗芸能大会解説書』
-
川越市教育委員会 編 (2003). 『川越氷川祭りの山車行事 調査報告書 本分編、資料編』
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川越市教育委員会 教育総務部文化財保護課 (2016). 川越氷川祭の山車行事. 『文化遺産の世界』 vol. 28 特集5 https://www.isan-no-sekai.jp/feature/201701_05 2025.8.31閲覧
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川越祭り公式ホームページ https://www.kawagoematsuri.jp/index.html 2025.8.1閲覧
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川越市ホームページ (2024.11.28). 無形民俗文化財一覧 https://www.city.kawagoe.saitama.jp/kurashi/bunka/1003787/1003798/1004069.html 2025.6.27閲覧
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川越市ホームページ(2025.7.15) 学校部活動地域連携・地域移行の推進について https://www.city.kawagoe.saitama.jp/kosodate/kyouiku/1004595/1004649.html 2025.8.3閲覧
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倉林正次 (1999).祭りと教育:子供を中心に. 国学院短期大学紀要、第17巻、3-17.
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埼玉県教育委員会「伝統音楽」及び「伝統芸能」実践事例等 https://www.pref.saitama.lg.jp/f2214/dentou.html 2025.8.23閲覧.
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毎日新聞 (2024.11.6) <コモンエイジ>祭りの「消滅」100件超す 都道府県の無形民俗文化財アンケート https://mainichi.jp/articles/20241104/k00/00m/040/184000c 2025.4.22閲覧
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小泉功 監修(2002).『川越の祭り』埼玉新聞社.
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柳田国男(1969). 『日本の祭』角川ソフィア文庫