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Artes escénicas populares con raíces en la gratitud

- Uno de los significados educativos de los festivales

(内藤俊史、2025.8.20   最終更新日 2026.1.9

キーワード:  民俗芸能、お囃子、祭り、地域における教育、川越市、神や自然への感謝

   自然や神仏への感謝や願いは、長い歴史において祭りなどの社会的・集団的活動を生み出してきました。それらの活動は広い意味で教育の場としても機能してきました。本ページでは、埼玉県川越市の状況を参考にしつつ、民俗芸能活動が持つ教育的意義について考えます。 

(所要時間:約10分・注含む)

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   はじめに 

   自然や神への畏敬に根ざした感謝や願いは、儀式や祭礼を生み出してきました。それらは、神職等による儀式に限らず地域住民の参加を伴い、暮らしに根ざした営みとして地域社会の結束を支えてきました。
   このページでは、儀式や祭礼の際に演じられる民俗芸能に焦点を当てます。ここで言う「民俗芸能」とは、
a.   地域の風俗慣習や信仰に根ざし、
b.   地域の人々によって行われ、
c.   世代をこえて継承されてきた
芸能を指します。
    本ページでは、特に「世代をこえた継承(c)」に着目し、ある程度の年月を要する指導や稽古など、継承のための活動を含む民俗芸能を取り上げます(注1)。 

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注1  

 「民俗芸能」という語について、日本芸術文化振興会のサイトには次のような説明があります。「地域の暮らしの中で行われる祭礼や行事において人々が演じる歌や舞、踊、演劇といった芸能、またその祭礼や行事そのものを民俗芸能といいます」。その上で、それらの芸能は、地域の担い手によって、地域の風土、信仰を反映しつつ、受け継がれてきたという説明が続きます(日本芸術文化振興会  2025.9.13 閲覧)

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   近年、こうした伝統的活動の果たしてきた機能が、改めて注目されています。地域の結束力や教育力の低下が指摘される中、その対応策として、地域における様々な教育的資源の活用が求められるようになりました。ここで言う「教育的資源」とは、子どもと大人の学びを促し支える人的資源や施設に加え、広く文化や伝統を含みます。そのためには、地域に眠る教育的資源を再発見したり、場合によっては新たに創造することが必要になります。地域における民俗芸能活動は、その有力な一つとして考えられます。

 しかし、民俗芸能活動のあり方や役割は各地域で異なると考えられます。このページでは、埼玉県川越市の状況を参考にしつつ、教育的資源としての民俗芸能活動の輪郭を描きます。なお、民俗芸能そのものというよりも民俗芸能に関わる様々な活動を意味するために「活動」という言葉を添えます。 

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川越市における伝統的民俗芸能活動

 川越市では、社寺の祭礼を初め、五穀豊穣への感謝を表す「万作」や無病息災を願う「ふせぎ」など、数多くの伝統的な年中行事が継承されています(注2)。それらの行事の多くで、獅子舞、お囃子、神楽といった伝統芸能が演じられます。 例えば、川越市には、国の重要無形民俗文化財に指定されている川越氷川祭りの山車行事を初めとして、6件の県指定無形民俗文化財、12件の市指定無形文化財がありますが、その多くで、獅子舞、お囃子、神楽などの伝統芸能が演じられます(川越市ホームページ、2025年)。なお、川越氷川祭りの場合には、山車行事などに参加するお囃子保存会などの団体が39団体あります(川越祭り公式ホームページ、2025年)。 

 しかし、全国的な傾向として、民俗芸能は後継者育成の問題に直面していると言われています(毎日新聞、2024.11.6)。川越市のお囃子保存会でも後継者育成の課題を認識し、その対応が試みられています(川越市教育委員会、2016)

注2

川越市内で行われている伝統芸能活動に関する主なサイト                  

                      

                        

​川越市で行われる祭りとしては、川越氷川祭りが知られていますが、その他の行事を含む解説書として以下を参考にしました。

  • 川越市教育委員会 (1981). 『川越市子ども民俗芸能大会解説書』 

  • 大久根茂 (2002). 川越の祭りと芸能. 小泉功 監修 『川越の祭り』 埼玉新聞社. pp. 194-199.             

川越祭りについて

  • 川越市教育委員会 編 (2003). 『川越氷川祭りの山車行事 調査報告書 本分編、資料編』

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民俗芸能活動の教育的資源としての意義

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 民俗芸能活動が教育的な意義をもつとすれば、それは民俗芸能活動のどのような性質によるのでしょうか。以下に、その主な要素を整理します。

A 共有された目的のもとに役割と責任が与えられること

  • 演技や演奏の具体的な目的が他のメンバーと共有され、その下で、参加者には具体的な役割と責任が課される。

  • 歴史や伝統の継承者としての自覚が求められることで、伝統に対する責任や役割を認識することにつながる。
  • ​祭りなどの「ハレ」の日に、公的な場において演技や演奏を披露する機会がある。ハレの日は、日常の日々に区切りを与える日でもあり、子どもや青年が自分自身の成長を確認したり自尊感情を高める場となり得る。

B 技能の習得過程における豊かな交流

  • 必要とされる技能は、熟達者である年長者から継承され、さらに年少者へと伝えられる。このように、年齢間の交流が行われ、子どもから高齢者まで幅広い世代が活動に関与する。 

  • 子どもや青年が「教える」「学ぶ」という双方の立場を経験する機会があり、集団として豊かな教育的相互作用が生まれる。 

  • 動作を中心とした身体的な学びと教えが豊富に含まれ、非言語的な伝達も重要な要素となる。   

C 地域の歴史に触れること

  • 一般的な日本史の理解に対して具体的な地域の歴史を位置づける契機となる。

  • 動作を通じて、過去の人々の体験を身体的に追体験し、歴史への理解を深める契機となる。 

  • 民俗芸能が関わる祭事は、自然との関わりを示すものが多く、自然に対する畏怖や感謝など人々がもち続けてきた感情に触れる機会がある。

 

 これらの特徴に基づいて、民俗芸能活動は、子どもや青年の自己アイデンティティ、自己肯定感、地域への愛着などが関わる教育の場となることができます(注3)。また他方で、そのような場は、高齢者を含む大人たちにとって、地域における教育的な役割・意義を自覚する場になります。

 

 

注3 学校教育との関係 

   地域における民俗芸能活動と学校教育との関係について、概略を以下にまとめます。

 学校教育の視点に立てば、民俗芸能を学校教育の教科における目標の下に位置づけることで、教育内容をより豊かにする可能性が生まれます。総合的な学習の時間、社会科、道徳科、音楽、体育などの授業において、祭りや民俗芸能を題材として活用する試みはすでに報告されています(例として、埼玉県教育委員会による県内学校での実践集)。さらに、特別活動において、部活動の選択肢として民俗芸能を取り入れる試み学校行事としての運動会における盆踊りの採用(学校文化への取り入れ)、放課後子供教室に採用する試みも既にみられます(子どもたちの意識調査として、近畿日本ツーリスト、2015)
 一方、地域の民俗芸能活動の視点に立てば、学校で取り上げられることにより、地域における民俗芸能活動の活性化に繋がる可能性があります。
 

 

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教育的資源としての民俗芸能活動の課題 

  教育的資源は、教育のための土台を提供します。しかし、それを真に教育として機能させるためには、子どもや青年一人ひとりが持つ、善くなろうという心を大切にし、彼らに働きかけることによって学びが促される環境を整える必要があります。

 

地域により異なる課題

 民俗芸能活動が地域の教育的資源として機能するためには、どのような課題があるのでしょうか。川越市の状況をみた場合、それらの課題は市内の各地域によって異なるようです。というのも、民俗芸能活動の現在のあり方に地域差があると推測されるからです。

 例えば、2000年代初頭に実施された川越氷川祭りに関する総合的な調査によると、対象となった38のお囃子連は、流派や使用楽器の構成だけでなく、会員数や入会資格において差異が見られました。会員数は15人から66人まで幅があり、入会資格に関しては、男性に限定している会が3件、何らかの年齢制限を設けている会が13件、さらに町内在住など居住地を条件としている会が19件ありました(川越市教育委員会, 2003, 資料編, p.434)。
 こうした差異に加え、現在の川越市における地域の多様性(商業地域、農業地域、集合住宅地域など)は、伝統的な民俗活動の維持・発展に関する課題が一様ではないことを示唆しています。

​課題の一般的性質  

 ここでは、具体的な事例から一歩離れて、民俗芸能活動において生じ得る課題の一般的な性質について考えます。民俗芸能に関わる活動では、指導体制や集団内の人間関係のあり方といった実践的な課題から、伝統的な価値観や信念への新たな対応といった抽象的な課題まで、さまざまな問題が考えられます。それらの中には、メンバー個人のライフスタイルの尊重やジェンダー平等といった現代的なテーマも含まれています。 
 また、民俗芸能が深く関わってきた祭りについてみると、近年では、宗教的要素と非宗教的要素(地域活性化、観光振興、地域愛の醸成など)との調和をいかに図るかという課題も浮上しています。

 個々の課題について詳細に扱うことはできませんが、これらの課題は主に、次の二つの一般的な対立的カテゴリーに分類されると考えられます。   

A. 伝統 vs 現在・将来
 伝統に根ざした価値観や信念と、現代社会における価値観との葛藤
B. 地域あるいは集団限定性 vs 普遍性
 地域固有の価値観や信念と、他の地域あるいは普遍的な価値観・信念との葛藤 

​ それぞれの地域における課題に、一つずつ対応していくことによって、民俗芸能は教育的資源としての力をさらに発揮することになると考えられます。

 

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民俗芸能活動と感謝の心

   最後に、このサイト全体のテーマである「感謝の心」が、民俗芸能活動にどのように関わるのかを考えます。ただし、時代による変化も速く、現時点で結論を導き出すことは難かしいと思われます。そこで、今後の探究に向けた基盤づくりとして、まずはその関係を見通すための手がかりを整理したいと思います。

祭りの目的としての感謝と祈念

    民俗芸能の多くは祭りの際に演じられ、祭りの一部として位置づけられています。そこでまず、祭りと感謝の関係について考えることにしましょう。

   一言でいえば、祭りは、神への感謝と祈念を込めた、一定の形式に基づく組織的な営みであると言えるでしょう(注4)。祭りにおける人々のさまざまな所作は、感謝と願いの表現として意味づけられます。たとえば、神前での拝礼や祝詞の奉仕、供物の奉納といった神事は、神に対する感謝や願いを示す行為とされます。また、山車の上で演じられる囃子や芝居も神への奉納芸能として意味づけられています。

祭りにおける人々の心

    祭りが感謝や願いを意味する組織的な営みであるとしても、祭りにおいてそれぞれの役割を担う人々が、必ずしも感謝の心や祈念に動機づけられているとは限りません。また、祭りに参加する子どもたちの感謝の心が高まるとも言えません。

 それでは、祭りにおける人々の心はどのようなものでしょうか。

   福島(2002)による高千穂夜神楽の研究では、神楽に関わる様々な役割を担う人々の意識が調査されています。その中には心から神々に感謝して舞うことを目指すという舞い手による語りが記されています(福島、2002)。

   一方で、歴史的に見ると、氏神への信仰を基盤としていた祭りは、次第に地域連帯や娯楽的要素などの非宗教的な目的が意識されるように変化してきました。 民俗学者の柳田国男は1941年に出版された著書『日本の祭』(初版)において、神主や氏子など神事に直接関わる人々による「祭り」と、当事者と直接関わりのない見物人も参加する「祭礼」とを区別しました(柳田、1969)。言葉の使い方としては異論もあるかも知れませんが、このような区別自体は現在の祭りを理解する上で示唆的です。   

   ところで、祭りにおける人々の心が多様であるとすれば、どのような要因が祭りにおける人々の心を規定しているのでしょうか。祭りにおける人々の意識は、以下のような要因によって差異や変化が生じていると考えられます。

  • 祭りにおける役割(神前で儀式をつかさどる人、山車上のお囃子の演者、山車を引く人等々。注5)。

  • 祭り自体の性質(宗教性の程度など)

  • 時代的・社会的要因(地域活性化、観光などの社会的要請など)

心を探求するための枠組み

 祭りにおける民俗芸能の担い手たちの心のあり方や心の変化を探究するためには、以下のような二つの観点が必要と考えられます。

1. 目的、動機の多様性

   近年では、祭りへの参加に込められた思いも多様化しています。氏神への感謝や祈念、氏神に限定しない超自然的な存在や自然への感謝と祈念、伝統の理解や継承、地域の連帯、郷土への愛着、芸術的表現、自己の達成感や自尊感情等々、さまざまな動機が意識されるようになってきました。

2. 心の重層性

   人間の心理を探究する際に留意すべき点の一つは、その多層性です。民俗芸能を含む祭りの参加者も、 以下のような複数の心の層を有していると考えられます。

  • 地域や社会の一員としての「公的な意見」

  • 個人としての思いや願いなどの「私的な思い」

  • 自分が気づいていない「無意識の動機」


 それぞれが異なる例として、公的には「地域の連帯感」を目的としていても、私的には「この一年の家族の幸福を神さまに感謝したい」という思いがあり、さらに無意識の深層では「舞手としての自分の技量を自他ともに示したい」という自尊感情が参加の原動力となっている場合など、さまざまな心の在り方が考えられます。
 このように、祭りという複合的な機能をもつに至った活動においては、人々の心もまた多層的かつ多様な動機づけによって構成されるため、その理解にとってこれらの視点は不可欠な枠組みと考えられます。

 

 これまで祭りにおける心理一般について考えてきました。民俗芸能活動の教育的意義を検討する際も、祭りのもつ複合的な機能を踏まえて、子どもや青年を広い視点から捉えることが必要と思われます。それは、私たちが祭りにおいて子どもや青年に伝えたいものが何かをあらためて確認することにもつながります。 

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注4

 現在では、宗教的な色彩のない、何らかの統一的なテーマの下で人々の集まる活動を「祭り」と呼ぶことがありますが、ここでは伝統的な祭りを想定しています。

注5 

 伝統的な祭りにおいて、年齢とともに高度な役割へと変化していく例があり、通過儀礼としての機能がみられることが指摘されています(倉林、1999)。祭りや民俗芸能活動の内部において、役割が分化され、期待される行為や意識も異なることが示唆されています。 

文献 

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